「屍人荘(しじんそう)の殺人」の原作の感想・考察!ゾンビや明智は?


しじんそう(屍人荘)の殺人の原作を読みました。映画化やコミックにもなっていて、しかも鮎川哲也賞受賞作ってこともあり、原作を読んでみました。

未読の方もいると思うのでネタバレしない範囲で、感想や考察を書いてみました。

「しじんそう(屍人荘)の殺人」を読もうと思ったきっかけ

単純に、流行っているのでどんな内容なのか興味があったからです。

ミステリーって、時代によって、すごく話題になることがあります。そのときそのときでどんな傾向のミステリーがトレンドなのかを知ることで、時代の流れなどもわかるのかなと思い、読んでみました。

そもそも本を読む人ってかなり少ないですが、そこで大ヒットしているということで、それまで本を読まない人もミステリーがきっかけで本を読むかもしれません。いや、そういう人の場合、映画やコミックに行くかもしれませんが。

とはいえ、どういう傾向が流行るのかを知ることは大事です。

「しじんそう(屍人荘)の殺人」を考察

設定の意外性

しじんそう(屍人荘)の殺人に関し、設定で意外性があったのはふたつあります。ひとつは舞台設定。というのは、屍人荘の殺人はクローズドサークルといって、孤島や吹雪の中の山荘とか、外界との連絡が閉ざされた空間の中で殺人事件が行われるというものです。

タイトルを見たときから薄々クローズドサークルだろうなと思っていたので、この設定自体とくに驚きはありませんでした。気になったのは、むしろ、使い古された感のある舞台設定をどうアレンジしていくのか、どう味付けしているのか、でした。

大学のサークルの夏の合宿(事実上、合コン)として集まった学生とそのOB連。ペンションの見取り図もあり、いかにもの設定。

大学生たちは、肝試しをはじめるのですが、そのとき、近くで行われているロックフェスでウイルステロが発生し、ウイルスに感染した人間がゾンビ化してしまうのです。

このゾンビ化した人間が、ペンションを囲み、中に侵入しようとしてこようとすることでクローズドサークルが出来上がるという設定です。

ゾンビが出てきた時点で、荒唐無稽さに読むのを中断しようかと思いましたが、ヒットしている要因を知りたいがために、読み進めました。

しかし、ゾンビというありえないような設定を利用した連続殺人が行われることできちんと謎が提示され、犯人は誰なのか?どうやって犯行を行ったのか?この点に焦点を絞り、謎解きがなされていくので、その点で、ミステリーとしての面白さを感じました。

つまり、ゾンビは、あくまでもペンションから出られない状況を作り出すための道具なのかなと感じました。

もうひとつの意外性は、名探偵(と思しきもの)が二人いて、そのうちの一人が、あっさりと死んでしまうことです。

僕はてっきりこの死んだ方が謎解きをする探偵役と思っていたのですが、死んだと思わせておき、どこかでまた戻ってくるのではと思っていました。むろん探偵役としてです。しかし、最後の方で戻っては来るのですが、探偵役としてではなく別の形で戻ってくるだけでした。やや、拍子抜けしたのと、別の探偵役がいたのかというところで意外でした。

こういう意外性で読者の想定を裏切り、物語に興味をもたせることに成功しているのではと思います。

犯行の偶発性と計画性のアンバランスさ

犯人は、ゾンビが発生することを事前にわかっていたわけではありません。ゾンビの出現はあくまでも偶然です。ですから、ゾンビの存在など想定もしていなかったわけで、当初は自分なりの殺害計画を練っていたわけです。

このことは犯人が、殺人を犯すために合宿にも参加していることでわかります。しかし、ゾンビの出現により、すべての計画をゾンビを利用することに作り変えています。

僕には、この辺のリアリティ感がどうにも希薄に感じました。

第一の殺害は、犯人の予期せぬ形でなされたわけですが、それを逆手に取る狡猾さとさらには他の殺人もすべてゾンビの存在を巧みに利用して行っていく発想力は並外れていると思いました。

いつゾンビが襲ってくるかもわからない危機的な状況下で犯人が、そこまでの冷静さを維持できる精神力を備えていた点にどうにも不自然さを感じたということです。

自分がゾンビに噛まれるかもしれない状況では、当初の計画を遂行する方が確実性がある気がします。

ゾンビの存在に怯えるのではなく、それを利用し、瞬時に殺害計画を練る犯人。当初の計画はゾンビが現れたことで、全く使えなかったのでしょうか?

このあたりの記述がなかったので、僕としては不自然さが残りました。

動機、トリック、真犯人に衝撃度はない

しじん荘の殺人事件について、殺人の動機や犯人が誰かという点での衝撃度はあまりなかったです。

動機は読んでいればわかるし、犯人もおそらく消去法でわかります。トリックは、伏線の張り方がシンプルなので、詳細にわからないまでもぼんやりとこんな感じかなというのは見当がつきます。

ミステリーの魅力は、読者の予想を裏切るところにあると思います。

そのために作者は、真犯人が誰なのかをぼやかし、ときにはミスリードさせ、読者に一体誰が犯人なんだろうと混乱させてしまうテクニックを弄するのではないでしょか?

そういう意味では、単純というかシンプルな内容です。

「屍人荘(しじんそう)の殺人」の感想

舞台装置にゾンビというややもすれば笑えてしまいかねない設定を見事にミステリーに仕立てている点は、痛快でした。ありえなさそうな設定を元にした有り得そうな話です。その着眼は、見事です。

ただ、やはり、ゾンビに対する大学生たちの反応に恐怖感や危機感があまり感じられないため、読んでいても、ハラハラ・ドキドキ感がないです。

おそらく、探偵役の女子大生とワトソン役の学生のやり取りが、軽薄なのも影響している気がします。

ちなみに、この探偵役の女子学生って、お嬢様風なイメージでしたが、会話での言葉使いが下品でスレた印象なのが違和感を感じました。

まとめ

正直、このようなミステリーが売れているんだと驚きました。

中心読者の年齢層は高校生?でしょうか?いや、もっと低い、小中学生なのかもしれません。コミックをノベライズしたのかと思うほど、会話にリアリティがなく、途中で挫折しそうになりながら、読みました。

ツカミが、ド派手なゾンビという設定のインパクトさにあるので、その点は、ありそうでなかった部分だと思いますが、とうとうそこに手を出したのかっていう印象もあります。

が、この発想は、これまでのミステリーには、なかったのではと思いますし、それを推理としてまとめたところに面白みがあるのだと感じました。