池袋ウエストゲートパーク11 「憎悪のパレード」の感想を書いてみた!

池袋ウエストゲートパーク11 「憎悪のパレード」

 

石田衣良の代表作、池袋ウエストゲートパーク11作目を読みました。実は、このIWPGシリーズは、全作品読んでいます。

今回、収録されている作品は、

「北口スモークタワー」
「ギャンブラーズ・ゴールド」
「西池袋ノマドトラップ」
「憎悪のパレード」

の4作品です。

さっくりとあらすじを説明すると、

「北口スモークタワー」

おばあさんが、脱法ドラッグでラリったやつが運転する車にはねられ、怪我をし、入院します。で、同居中の少女が、敵討ちのよういスモークタワーと呼ばれる脱法ドラッグ店が入ったビルを放火しようとします。それを知り、キングこと安藤崇が、その脱法ドラッグ店を潰そうとマコトに依頼します。

マコトは教授と言われている脱法ドラッグ研究者といっしょに作戦を練り、見事に潰していきます。ただ、その教授は、以前大麻にはまり、妻と離婚、一人娘の記憶も小さい頃のことしかないそうで、その罪滅ぼしに今回の仕事を引き受けたそうです。

かけがえのないもの、少女にとってはおばあさんであり、教授にとっては娘の小さい頃の思い出、を失いそうになり、それをどうにか取り戻したい気持ちが書かれています。マコトは、教授に失われたものは取り返せないけど、これから新しく作っていけるものでもあると言うんですよね。

「ギャンブラーズ・ゴールド」
パチンコにハマるギャンブル依存症の男とその妻、娘の話です。妻は娘のために自分を犠牲にし、生活している。夫はパチンコにはまり借金をしているが、その借金をギャンブルで取り返そうとするどん底の生活を続けています。それを知ったマコトはタカシに頼み、男をギャンブル依存から立ち直らせていきます。タカシに依頼され、やってきた別の男がサポートになり、ようやくパチンコから抜け出していきます。

でも、そのサポート役の男もギャンブル依存症でした。ギャンブルですべてを失った男でした。

ここでも失われた過去は消えないけど、新しく前を向き、生きていこうとする姿が描かれています。

「西池袋ノマドトラップ」

ノマドライフを送っている男が、狂暴な兄弟から次々に自分が使っているコワーキングスペースを破壊されていきます。原因は、男が、ネットビジネスを通じ、信奉するようになった男のねずみ講にその兄弟を紹介したためです。兄弟は大金を投資したけど、一向にお金が増えないことで怒っていたのです。

マコトと崇は、これ以上池袋を荒らされないように兄弟を懲らしめるわけですが、ここでも兄弟は金を、マコトと崇は池袋を、ノマド男はワーキングスペースという居場所を失います。そうして、それらを取り返そうとして、立ち上がるわけです。

 

「憎悪のパレード」

ヘイトスピーチを題材にしながら、池袋の再開発のために良き時代の象徴的なパラダイスビルから追い出された老人、そして今、追い出されそうになっている夫婦が、失われた日々を取り返そうとする話です。

このように全編に通じているのは、自分にとってかけがえのないものを失ったり、失いつつ人間が、一度は諦めるものの、マコトやタカシの行動などから、もう一度取り返そうと前を向いていく話なんです。

とはいえ、失われたものは、もう二度と帰ってこない。

けど、今からまた新しくかけがえのないものをマコトという人間を通じ、作っていこうというエネルギーを得て、それに向かっていく話です。

 

読むとはじめはすごく重く苦しい話なんですが、最後は少し前向きになれる話です。短編って、それぞれの作品の根底に流れているテーマが、一緒なんですね。

池袋という街で起こっていることを、マコトという視点で覗き見る世界は、すごく嫌気が差すこともあります。

けど、そこで絶望するのではなく、しっかりと現実にケジメをつけ、そこから今度は前向きになり、未来に希望を抱かせるような読後感に浸れるのが、IWGPシリーズの人気の秘密なんでしょうね。