幻の女 ウイリアム・アイリッシュ

幻の女 ウイリアム・アイリッシュ ハヤカワ文庫 【新訳版】

森博嗣のルーツミステリー100で、この作品のことを知り、読みました。

冒頭から最後まで、とにかく文章が洗練されていて、かっこいい印象です。詩的な比喩やセリフなどもそれだけだとキザなんですが、物語の全体の流れの中だと、全然キザに感じられません。むしろ洒落ているのです。

冒頭の「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」は、かなり有名だそうですが、(僕は知らなかった。)この一文からはじまる世界は、全然古さを感じさせませんし、この冒頭で一気に物語に惹き込んでいきます。

物語は、妻殺しの容疑者となった男が、直前までいっしょにいたオレンジ色の帽子をかぶった女性のことをアリバイを証明するために2人がいっしょにいた場所へ赴き、女性のことを尋ねるのですが、だれひとりその女性を見たというものはいなかったのです。

男は死刑判決を受けるのですが、果たして男の無実は証明されるのか?といった内容です。

数々の困難を乗り越えながらも、探している女性に近づいていくストーリーと死刑執行日の十八日前といった章タイトルが、サスペンス感を大いに盛り上げていきます。

最後の最後まで予想がつかないドンデン返しの展開には、驚きました。

ちなみに、最も羨ましいと感じたシーンは、主人公の男の愛人が、男を愛している理由をあれこれ語るのですが、男はそんな愛人のセリフに「よしてくれ。」「自分には、そんな値打ちはない」と否定します。

それに対し、愛人は、「値札はわたしがつけたんだから、値切らないで」と返すのです。

こんなセリフ一度でもいいので言われてみたいものです。

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