現代を読み解くための世界史講義 神野正史

「現代を読み解くための世界史講義」 神野正史 日経BP社

 

この本は歴史について、もっと学びたいという気持ちから、書店を訪れたときにたまたま見つけて購入しました。世界史をもっと知りたいという気持ちにしてくれたし、内容も非常にタメになりました。

テレビなどで取り上げられている国内や世界のニュースについて、世界史の史実を例に、その本質やなぜそのようなことが起こっているのかということ考察している内容です。

本書で取り上げている内容は、憲法改正問題からベッキーの不倫騒動まで、多岐にわたりますが、世界史を理解していると、なぜそうなったのかということがよく理解できます。歴史に学ぶとは、このような本を言うのだなと痛感しました。

この本を読んで思ったのは、歴史を学ぶ上で年号や人物名など本当に些末なものだなということです。歴史を理解するということは、歴史の本質を学ぶことであり、歴史を理解していくことで今、世の中で起きている事象が、過去の何らかの事例にあてはめることができ、なぜ、そのようなことが起きているのか、そして、その結果どうなっていくのかということが予想できるのです。

特に興味深かったのは、オバマ大統領の広島訪問に関する内容です。日本とアメリカのそもそもの国民性と言うか民族性の違いは、決して相容れるものではないということです。互いの本質的な民族性の違い、価値感は、互いに理解し得ないものなのであるので、理解ではなく受け容れるという態度が必要だということです。

日本ではオバマ大統領の広島訪問の映像を見て、感動した人も多いと思いますが、あの行動にはやはり大きな意味があったのだということがよくわかります。

もっともっと世界史について学びたい気持ちになったのは、間違いありません。

 

 

 

ナイン・ストーリーズ J.D.サリンジャー 

ナイン・ストーリーズ J.D.サリンジャー 新潮文庫 野崎 孝訳

はじめてサリンジャーの作品を読みました。おそすぎると言えば遅いのでしょうが・・・。

読み始めてすぐに感じたのは、とにかくカッコいいというのが印象です。なにがかっこいいかというか、まずタイトルです。タイトルが秀逸で、タイトルを見ただけでは、どんな内容の小説なのかということが容易に想像できないところがいいです。

また、文体も洗練されています。読んでいてその情景がまざまざと頭の中に映像して浮かんでくるのです。部屋の様子であるとか人物の表情であるとか、そういうシーンを描写している場面はもちろんですが、そうではない、たとえば、主人公の内面的な部分を書いてあるシーンにおいても、主人公がどんな表情をしているとかどんな格好をしながら、思考しているのかということが、自分の中で鮮明に浮かんでくるほどです。

ナイン・ストーリーズは、サリンジャーが自ら選出した9つの短編です。

9つの物語のどれも最後の結末、最後の一文を読んだ瞬間に、ミステリーの謎解きのようなすっきりさが残るわけではなく、むしろ、もやもや感というか頭がくらくらしてきそうなものが、どんどん脳内に広がっていく感じです。

物語の結末で、読者にそこから先どうなったのかと推理させる部分と同時にそこに至るまでになにが起きていたのかとあらためて考えさせられる部分があると思います。

おそらく、一度読んだだけでは理解できない部分もあるので、また再読したい本です。

 

 

 

君の膵臓をたべたい 住野よる

君の膵臓をたべたい 住野よる 双葉文庫

今の時代に話題になった本、売れている本であるという観点から読んでみました。そのため文庫になったのを機会に購入。

この本の中心読者層は、おそらく小・中学生あたりではないでしょうか。高校生以上のリテラシーを持つものが読む小説としては、あまりにも稚拙な文章だなと思いました。

ストーリーは、他人と関わろうとしない主人公の男子高校生が、ある日共病文庫という本を拾ったことで、その持ち主であるクラスメイトの女の子と話すようになり、本人が余命一年であることを聞かされます。女の子は主人公とは真逆の性格で、主人公を誘い、焼肉や旅行に行ったり、彼女の家に呼んだりするようになります。そうするうちに、だんだんと主人公は、彼女から他人と関わること、生きることに対し、前向きになることを教わっていき、成長していくという内容です。

少し驚いたのは、彼女の死に方です。やや意外に感じましたが、それ以外の点については、ほぼ予想がつく内容でした。

読後は、改めて今の日本の小説って、なんだかお気楽だなぁって思いました。

こういうものはお約束的な内容ですよね。余命が短い他人と知り合い、主人公が変化していくというものって、昔からありますよね。

結局、悲しいという感情を刺激され涙を流す。それを感動する物語であると勘違いして、騒いでいるような気がしてなりませんでした。

ただ、こういうストーリーは、売れ線なのだなとあらためてわかりました。

幻の女 ウイリアム・アイリッシュ

幻の女 ウイリアム・アイリッシュ ハヤカワ文庫 【新訳版】

 

森博嗣のルーツミステリー100で、この作品のことを知り、読みました。

冒頭から最後まで、とにかく文章が洗練されていて、かっこいい印象です。詩的な比喩やセリフなどもそれだけだとキザなんですが、物語の全体の流れの中だと、全然キザに感じられません。むしろ洒落ているのです。

冒頭の「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」は、かなり有名だそうですが、(僕は知らなかった。)この一文からはじまる世界は、全然古さを感じさせませんし、この冒頭で一気に物語に惹き込んでいきます。

物語は、妻殺しの容疑者となった男が、直前までいっしょにいたオレンジ色の帽子をかぶった女性のことをアリバイを証明するために2人がいっしょにいた場所へ赴き、女性のことを尋ねるのですが、だれひとりその女性を見たというものはいなかったのです。

男は死刑判決を受けるのですが、果たして男の無実は証明されるのか?といった内容です。

数々の困難を乗り越えながらも、探している女性に近づいていくストーリーと死刑執行日の十八日前といった章タイトルが、サスペンス感を大いに盛り上げていきます。

最後の最後まで予想がつかないドンデン返しの展開には、驚きました。

ちなみに、最も羨ましいと感じたシーンは、主人公の男の愛人が、男を愛している理由をあれこれ語るのですが、男はそんな愛人のセリフに「よしてくれ。」「自分には、そんな値打ちはない」と否定します。

それに対し、愛人は、「値札はわたしがつけたんだから、値切らないで」と返すのです。

こんなセリフ一度でもいいので言われてみたいものです。

 

夏のレプリカ 森博嗣

夏のレプリカ 森博嗣  講談社文庫

この作品は、前作「幻惑の死と使途」と同時期に起きた事件を別個独立させた物語です。幻惑の死と使途では、奇数章のみ、この夏のレプリカでは、偶数章しかありません。

幻惑の死と使途を読み終えた後、どうしてもこの作品の内容が気になり、読みました。

幻惑の死と使途(以下、幻惑)の方は、密室トリックや死体消失があったりで、派手なイメージが有りましたが、こちらはいたって淡々とストーリが進んでいきます。起こった事件は誘拐とその誘拐犯の殺害事件、さらには誘拐された家族の長男の失踪(誘拐された?)です。

探偵役の犀川助教授の登場は、後半に入ってからですし、事件の解明はほとんどが西畑という刑事の思考と西之園萌絵の推理により、進んでいきます。

ただ、これは幻惑の事件の方がどうしても捜査の比重が高いためであることで納得できます。

物語の核となる殺人事件の犯人が誰なのか?については、意外な人物でした。僕が思っていたのと違いました。(T_T)

ただ、真相に気づくには、作中で犀川が言う「誰も気がつかないのは、全員があまりにも当事者だからだ」という言葉に尽きると思います。

物事を客観することで、気付かなった部分が気づくようになるのではないでしょうか?種がわかるというか。

先に読んだ森氏のつぼみ茸ムースというエッセイで、「ネタバレ」なしで、物語を書く、それがミステリィ作家の能力。という章があります。

作者はヒントを出しながらも、ネタバレさせずに読者を先へ先へ読み進めさせていきます。

なので、ヒントを客観することで、ネタに気づくこともあるのかなと思いました。

ところで、タイトルの「夏のレプリカ」のレプリカとは、幻惑の死と使途の事件のレプリカということなのでしょうか?

 

 

世界史から「名画の謎」を解く 日本博学倶楽部

世界史から「名画の謎」を解く 日本博学倶楽部 PHP文庫

古代ギリシャ・ローマ時代から20世紀の美術まで美術の歴史におけるなぜについて、その背景にある世界史との関連性から紐解いていく内容です。

芸術は好きなので、絵画にも興味がありました。ただ、今までは、絵画と画家という関係で鑑賞していたので、単なる自分の好みや知名度などで絵を観ていました。出来上がった作品を鑑賞するだけです。鑑賞するうえで、疑問に感じた部分についてはあくまでも自分なりの解釈で謎を解消していただけというレベルです。

僕のような絵画観賞初級レベルの方は、この本により、絵画の潮流というものを理解できると思います。

絵画は、世相や時代を反映しています。そのため政治的なしがらみや権力に左右されていた部分があった。したがって、絵画における主流の傾向、いわゆる多数派ができるとそれに反する少数派が出現し、やがてその少数派が多数派へ変わっていき、また別の少数派ができていくという、その繰り返しであることが、流れとして理解できました。

新しいものが生まれる背景には、常に少数派の存在が、あるということです。

今まで、バロックだのロマン主義だの、印象派、ポスト印象派、写実主義だのって、点でしかわかっていなかった絵画について、それらの流れが線となり、そしてさらには波となり、理解できたことは大きかったと思います。

ちにみに、日本博学倶楽部についての詳細はネットで検索しても、はっきりとしたことが掴みきれませんでした。

つぼみ茸ムース 森博嗣

つぼみ茸ムース 森博嗣 講談社文庫

森氏のエッセィである「クリームシリーズ」の第5冊目です。このシリーズは、全部読んでいます。100個のタイトルがあり、どこから読んでもいいので、はじめは気になったタイトルのものを、読んでいき、あとははじめから順番に読むといった感じです。結果的に気になった箇所は2回読んでしまいます。

自分の本の読み方が変わってきたのか、今回は、読んだ内容からいくつかの項目を自分なりに取り入れてみました。

もっとも影響を受けたのは、84「作業量を分轄し予定を組む。それに従って粛々と実施する。」です。

僕は、結果だけを追い求めて、そこに向かうプロセスロをすっ飛ばしていた傾向にありました。なので、これまで自分でこうなりたいって思ったことをなかなか実現出来ませんでした。でも、この項を読んで、どんなに大きなことでも1日の作業量を分轄し割り出して、あとはそれの作業量を淡々とこなしていくことで、大きなことをやり遂げられるということを今更ながら認識できた次第です。

まさに目からウロコという状態でした。(^_^;)

おかげで、今取り組んでいることを小分にして、まずは無理のない作業量に落とし込み、取り組んでいます。

 

他にも62を読み、ミステリィ小説の読み方が変わりましたし、53を読んで、共感したり・・・。

黙読ですけど、読んでいていちいちなるほどって心のなかで叫んでしまった本です。

 

 

緑衣の女 アーナルデュル・インドリダソン

緑衣の女 アーナルデュル・インドリダソン 創元推理文庫

近所の書店で、タイトルと表紙を見て、いわゆるジャケ買いした本です。本を買うときは、少なからず先行情報がインプットされています。大まかに〇〇の本といった感じで。ですから、そういう情報をあえて入れないで読んでみたいと思い、書店でパッと見で買いました。

感想については、暗くて重いです。どす~んと重いと言うよりは、ドヨンとした暗さです。(わかるかな?)

事件の発端となった人骨をしゃぶる子供のシーンから、その骨の身元を探っていくというのがメインストーリです。推理ではなく、主人公たちが事件を探っていき、真相を突き止めていくので、ドンデン返しとかトリックとかはないに等しいです。

家庭内暴力のシーンが克明に描かれていて、その暴力に怯える家族の描写が秀逸だと思いました。そのため、いい意味で読んでいて気分が滅入ってくるほどでした。また、エンディングでは、真相はもちろん解決されていくわけですが、事件が起きた遠い昔と事件を追いかけた結果としての今との時間的対比により、その間にある変化、埋めることのできない溝に何とも言えないやるせなさを感じさせられました。

物語の舞台であるアイスランドの耳慣れない地名や人名にやや戸惑いはあるものの、その辺は瑣末な部分と思い、こいつは主人公とかこれは部下の女性といった具合に、大体の役割だけ認識し、きちんと読むことはすっ飛ばして、読みました。(とにかく読みにくい人名が多いので)

物語は、戦争当時のアイスランドの家庭で起きた話と、主人公の家族との物語が、交錯し、進んでいきます。

内容はかなり重厚で、戦争当時のアイスランドで起きた息苦しさを感じる部分と、家族とか結婚、親子についてかんがえさせられるような物語でした。

Gene Mapper -full build-  藤井太洋

Gene Mapper -full build-  藤井太洋 ハヤカワ文庫

遺伝子管理された人工的な植物である蒸留植物、拡張現実によるアバターを使い、時間と場所を超えてのコミュニケーションが当たり前になっている近未来の世界が舞台。そこで起きた不可思議な事件の原因を主人公が追っていくというSF小説。

藤井太洋のデビュー作。

ネットで話題になっていたので読んでみましたが、ミステリー性もサスペンス性もさほど感じられない内容で、主人公が事件を追っていくので、読者はそれについていけば真相が解明されていきます。

つまり、考えることなく黙って読み進めていけば、自ずと真相にたどり着くし、伏線もわかりやすいので、これはこうだなって読んでいての安心感はありました。(皮肉です)

が、やはり、冒頭に謎が提示されるわけですから、その謎の真相に関する意外性という部分、「そう来たか!やられた」というオドロキが欲しかったと思います。まぁ、そういうストーリではないのかもしれませんが、ちょっともったいない感じがしました。

それに、主人公を取り巻く登場人物にもっとクセというか、怪しさが欲しかったと思います。人間の裏切りとかエゴとかがもっとドロドロと描かれていれば、結末は同じでももう少し違った感想、読み終えて、いろいろなことが頭を駆け巡るような・・・。

登場人物たちが、あまりにも想像通りの人たちで、最後はある意味ハッピーエンドなので、余計に読後感があっさりしすぎていて、物足りなさを感じてしまいました。

それにしてもアマゾンでの評価は、高いんですよね~。

 

密室殺人ゲーム2.0 歌野晶午

「密室殺人ゲーム2.0」 歌野晶午 講談社文庫

チャット上で、5人のキャラクターが、それぞれが実際に行った殺人の方法をあーでもないこーでもないと推理していくという設定であり、物語としての内容云々より、あくまでもゲームと割り切ったうえで、そのゲーム展開の題材がたまたま殺人、人を殺すというだけの話である。

推理小説には、動機というものが重要視されるが、現実の殺人事件には、動機が不明なものは山ほどあります。個人的には殺人に必ずしも動機が必要とは思っていないし、その方がリアリティは有ると思っています。なので、この小説が、あくまでも推理にフォーカスし、出題された殺人事件を5人のキャラクターが解明していく展開に、あっぱれという気持ちがしました。

これぞ、パズラー!

ではないのか?

そんな気概が感じられた作品です。

現実にこういう世界があるなら、かなり興味深いし、恐怖を感じますが・・・。

 

文庫本で600ページほどありますが、読み始めると一気に読めてしまいます。雰囲気作り的な情景の描写や、主人公の視点による心情やら、そういったものを排除し、あくまでも推理していく、どうやってこの犯罪が可能なのかを解いていくことに終始しているので、そういう推理小説が好きな人には、おすすめだと思います。

しかも、真相は二転三転していくので、コレでもかという感じの展開で楽しめます。

シリーズになっているそうで、密室殺人ゲーム王手飛車取りを先に読むのがいいそうです。僕は読んでいませんので、あくまでもこの作品だけを読んだ感想を書いていますのであしからず。